『会話のキャッチボール』に不可欠な2つの要素:「話し方」の心理学

 自分は"会話"というものに対して少しコンプレックスを感じています。会話が盛り上がるときもありますが、盛り上がらないときのほうが多い。人と話すのが、どうも得意ではないのです。
 しかし社会に出たら、コミュニケーション能力は絶対に必要になります。上手くやっていけるのか、正直不安です。そんな不安を解消するべく『「話し方」の心理学(Jesse S. Nirenberg 著)』という本を読んでみました。
 今回は読んでいて特に印象に残った部分を紹介したいと思います。

トム 「どんなお仕事をなさっていますか?」


ビル 「弁護士です」


トム 「ご専門は?」


ビル 「とくに決まっていません。大半は民事ですがね。そちらが得意ですから。でも刑事事件も扱いますよ。離婚裁判、信託と不動産に関する提訴などを」


トム 「事務所はどちらですか?」

 と話が続いていきます。このやり取りに対して、著者は次のように述べています。

 トムは一方的に質問を発するだけで、相手と会話を作り上げようという気持ちがない。自分の意見を述べたり、感情を伝えたり、ビルの言葉に反応を返したりすることがまったくない。自分から情報を提供する気配もない。トムはビルを生身の人間として扱ってはいない。ものを調べているのと同じだ。

 残念ながら、自分もこのような対応をしていることが多いと思いました。たいしたリアクションをせずに、次々と質問してしまう。"会話のキャッチボール"が成り立っていません。

 ではどうすれば"会話のキャッチボール"が成り立つのでしょうか。改善例として、次のような会話が提示されています。

トム 「どんなお仕事をなさっていますか?」


ビル 「弁護士です」


トム 「おや、パーティーで弁護士さんにお会いできるとは運がいい。弁護士さんからは興味深いお話がたくさんうかがえますからね。ご専門は刑事事件ですか、それとも民事ですか?」


ビル 「大部分は民事ですが、それ以外も少しはやります。刑事事件、離婚提訴、信託、不動産に関する提訴などですかね。大物ならともかく、選り好みはできませんからね。お金を浪費するからいけないのかもしれませんが。」


トム 「耳が痛いですね。消費を煽る仕事をしている身には。じつはわたしは広告業界で仕事をしています。スポンサーの担当をしています。自分でも広告に踊らされて銀行残高を減らしているのですから、始末に負えません。わたしは郊外から通勤しているのですが、ひょっとして同じ身の上ですか?」

 今回はトムはビルに一方的に質問するだけではありません。トムは相手の発言を受け止めて、きちんと対応しています。そして相手から情報を引き出すときには、まず自分の情報を提供しています。これこそが"会話のキャッチボール"というものなのです。

 トムは自分の情報をすすんでビルに提供した。これはつまり、あなたを信頼します、だからわたしのことを教えましょう、ということだ。またビルの発言に一つひとつきちんと反応している。あなたを尊重しています、あなたの発言を高く評価していますという意思表示だ。これを受けてビルは更に開放的になる。

 「なるほど!」と思わされました。相手に自分の情報を提供するということは、相手を信頼するということ。相手の発言に対してきちんと反応するということは、相手を尊重するということ。

 これは会話に限らず、人間関係を築く上でも大いに参考になります。信頼されるには、相手を信頼しなければいけない。信頼を示すには、自分の情報を提供すればよい。

  1. 質問をするだけでなく、自分の情報も提供する。
  2. 相手の発言に対して、きちんと対応する。

 この2つを守れば"会話のキャッチボール"は成立する。

 すぐにはできないかもしれません。でも意識して実践していきたいと思います。

「話し方」の心理学―必ず相手を聞く気にさせるテクニック (Best of business)

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